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私の手でグラスはもっとかわいくなる。

 
仕事、私生活、趣味、恋愛、目標、悩み・・・
いろいろなことを抱えながらも、前向きに生きる女性たちのインタビューです。
 
業界や職種に限らず、全ての“働く女性たち”が、前を向いて進めますように。
これを読むあなたにもエールを送ります。
 

今回のインタビューは、石川美幸さんです。
石川さんは、グラス製品の様々な加工を行う東京都江東区の椎名切子で職人として働いています。
 

キラキラした可愛いものが好き! 外で遊ぶことが好きなフリをしていた子ども時代。

 
子どもの頃、実は外で遊ぶのが好きなフリをずっとしていました。 本当は家でゲームをしたり漫画を読んだりしたいのに、当時はオタクっぽいのはカッコ悪いみたいな時代で、外で遊ぶしかないっていう感じでした。
 
でも、ずっと外で遊んでると無意識に疲れてしまうみたいで、気付いたらみんなから離れて地面にいるアリをじっと眺めるような、そんな子どもでした。
 
キラキラしたものが昔から好きです。キラキラしたシールとか、子供の時は集めていました。コレクター気質もあるので、その頃から好きなものを集めることが好きでしたね。
今は『ジョジョの奇妙な冒険』が好きで、関連グッズを集めています。ハマると色々集めたくなっちゃうんです。
 

事務職で入社。でも「職人になりたい!」

 
美容専門学校を卒業し、最初は美容師として働いていました。でも、皮膚が弱くて手荒れに悩み、薬剤をたくさん使う美容師の仕事ができなくなりました。その後、いくつかの仕事を経て、ある会社で椎名切子の椎名隆行さんと出会ったんです。
 
たまたま同じタイミングで同じ部署になりました。私もその部署の仕事は初めてでわからないのに、お構いなしにあれこれ質問してきたのが椎名さんでした(笑) なんとかして教えているうちに仲良くなり、会社の仲間たちとも一緒に飲みに行くようになりました。
 
椎名さんが椎名切子で自分の事業を立ち上げるために先に退職され、その後私も転職し別の会社で働いていましたが、月に1度は飲みに行くような交流は続いていました。ある日、飲みに行った席で、椎名さんから事務の仕事を手伝ってほしいと頼まれことがきっかけで、事務職として椎名切子に入社しました。
 
入社後はホームページコラムを更新したり、テレビの反響がどのくらいあったか調べたり、メディア向けのプレスリリースを出したりと、広報やマーケティングの仕事をやりました。未経験でしたが、椎名切子に入ってから勉強しました。
 
他にも通販サイト用に商品の写真を撮ったり説明文を書いたりSNSをやったり、どれも経験はなかったんですが、写真や文章を書くのは好きなので今でも楽しみながらやっています。
 
ある日、椎名さんから「平切子の後継者をどうするか悩んでいる」という話を聞きました。椎名さんの弟・康之さんは別の加工の仕事に忙殺されていて、お父さんの康夫さんがやっている「平切子」を後継する人がいないということでした。それを聞いて、「私がやります!」と手を挙げたんです。
 
椎名さんはびっくりしたと思いますが、椎名切子で働いているうちに、作る方にも興味が出てきたんです。それに、元々手に職を付けたいと思っていて、かつて美容師を志したのも同じ理由でした。「職人の仕事に興味はあるけど、どうやったら職人になれるの?」と思ったこともあったので、チャンスだ!と思いました。
 

世界に10人しかいない平切子の職人として

 
事務職から職人に転向してからは、主に平切子という技法を使って製品を作る仕事をしています。平切子の技術の中で、「三番掛け」と言われる作業は特に難しくて、まだ綺麗に削ることができません。
なので、今はこの工程はお父さんの康夫さんにやってもらっています。
 
ガラスの側面に楕円型に削られているところが「平切子」
ガラスの側面に楕円型に削られているところが「平切子」
 
お父さんの康夫さんとは、いわゆる師匠と弟子という感じではないかもしれないですね。「これやれるか?」と言われても、できそうになければ、「できない」と普通に言ったりしています(笑)。必要以上に気を遣わず、自然体で仕事できていますね。
 
平切子をやりながらこの2年くらい別の師匠のところに「江戸切子」を習いに行っているんです。
かつては椎名硝子でもお母さんが江戸切子をやっていたんですが、今はやっていないので、私が江戸切子の技術を習得できたら、仕事の幅が広がるだろうなと思って勉強しています。
 
将来的には平切子と江戸切子、両方の良いところがちゃんとわかるような製品が作りたいです。そのためには、もっともっと経験を積みたいと思っています。
 

平切子って“かわいい”!帯留めやコスプレの装飾まで、ガラスでかわいいもの、カッコいいものを作りたい

 
この仕事を始めてから友達に「昔からキラキラしたものとか、かわいいもの好きだったもんね。」と言われて、自分でも納得したことがあります。かわいいものを作るのって楽しいです。平切子の面のツルツルした感じとか、かわいいんですよホントに。
 
私、着物が好きで、いつか着物の帯留めを作ってみたいんです。切子の帯留め自体は元々あるんですが、すごく高価でなかなか手が出せないんです。もっと安価で手に取りやすいものを作れないかなと思っています。
 
あとは、ガラスでキラキラしたものが合うジャンルで考えると、コスプレ業界にも参入したいと思っているんです。
 
私自身がコスプレイヤーだったのでよくわかるんですが、コスプレに使える飾りを探している人も多いと思うんですよね。
 
そんなかわいいもの、カッコいいものを作りたいという気持ちがあるので、そういった需要があるならぜひ協力したいと思っています。
 

淡々と、自分の時間を楽しみながら仕事に没頭する毎日がいい

 
将来に大きな野望はありません。自分の時間を楽しみながら、仕事に没頭できる毎日がいいなと思思っています。椎名さんが大きな野望をいつも持ってくるタイプなので(笑)私は、「じゃあそれやるか」といって淡々とやりたいです。いつかこの工房を離れる時が来たとしても、別の形で協力したり、技術を教えたりしてこの業界には携わっていきたいです。
 

 
工場の中やガラスを研ぐ石川さんの動画も見られる『ものづくり新聞』の取材記事はコチラ
 
♡石川さんと“かわいい”平切子の世界は漫画でも公開しています♡
作:らてまる。
作:らてまる。